遺伝分野に出てくる用語のまとめ
「ゲノム」「遺伝子」「DNA」・・・
遺伝分野では、遺伝物質に関する似たような用語がたくさん出てきます。
最初にこれらの言葉の違いを整理しておかないと、分野全体の理解が曖昧になってしまうため、必ずおさえておきましょう。
スケールの小さいものから順に説明していきます。
・ヌクレオチドとは
塩基と糖、リン酸が結合した物質を指します。
図にするとこんな感じ。
※塩基と糖が結合した物質をヌクレオシドといいます。
・核酸とは
ヌクレオチドが多数結合してできた物質を指します。
核酸にはデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)の2種類が存在します。
図にするとこんな感じ。
・DNAとは
2種類ある核酸のうち、糖がデオキシリボースであり、塩基としてアデニン、グアニン、チミン、シトシンをもつものを指します。
なお、糖がリボースであり、塩基としてアデニン、ウラシル、チミン、シトシンをもつ核酸をRNAと呼びます。
・染色体とは
DNAがタンパク質と結合してできた複合体を指します。
ヒストンなどのタンパク質が結合しているという点で、DNAとは異なります。
核内のDNAは、何本かの染色体に分かれて存在しています。例えば、ヒトの細胞の核内には46本の染色体が存在し、1つの染色体は1本の非常に長いDNAとそれに結合したタンパク質からできています。
「細胞分裂期に現れる、DNAとタンパク質の複合体が凝集して棒状になった構造体」 (この状態→)
のみを指す場合も見られますが、この用法は古く、凝集せずとも染色体と呼ぶことが多いです。
・遺伝子とは
タンパク質やRNA分子を合成するために必要な情報をもつDNAの領域を指します。
DNAの中には、タンパク質やRNA分子をコードしないものもあり、真核生物では非常に多くのDNAがこれにあたります。
図にするとこんな感じ。
「タンパク質やRNA分子」 と書いたのは、DNAから転写されたRNAは全てが翻訳されるわけではなく、RNAそのものが最終産物となる場合もあるためです。
例えば、tRNAやrRNAなどは、それら自身が翻訳されるわけではないですよね。
・ゲノムとは
ゲノムの定義は2つ存在します。
① 生物が自らを形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報の1セット。
①の定義では、一倍体生物はゲノムを1セット、二倍体生物ではゲノムを2セット、四倍体生物ではゲノムを4セットもっていると考えます。すなわち、ヒトのような二倍体生物では、生殖細胞がもつ全遺伝情報がゲノムであると考えることができます。
「ゲノムサイズ」という用語における「ゲノム」とは①の場合を指し、「ゲノムサイズ」は一倍体ゲノムあたりの塩基対数を表します。つまり、ヒトのゲノムサイズは約30憶塩基対ですが、ヒトの体細胞1つがもつ塩基対数は約60憶ということになります。
② ある細胞や生物がもつ全ての遺伝情報。
②の定義では、①のようなややこしいことは考えず、生物やその細胞がもつ遺伝情報のすべてを指します。
「ゲノム解析」とか言う場合には、②のような意味を表すと思ってよいです。
以上になります。これだけじゃ分からないという人も多いと思うので、分からない部分はどんどん質問してください!!
最後に、記述の解答っぽくまとめておきます。印刷してノートに貼る等、自由に使ってください。
ヌクレオチド:塩基と糖、リン酸が結合した物質。
DNA:2種類ある核酸のうち、糖がデオキシリボースであり、塩基としてアデニン、グアニン、チミン、シトシンをもつもの。
染色体:DNAがタンパク質と結合してできた複合体。
遺伝子:タンパク質やRNA分子を合成するために必要な情報をもつDNAの領域。
ゲノム:「生物が自らを形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報の1セット」あるいは「ある細胞や生物がもつ全ての遺伝情報」。