抗原抗体反応で生じる沈降線の位置 Part1
ゲル内での抗原抗体反応によって生じる沈降線の位置に関する問題はよく見かけると思いますが、教科書や資料集だけ読んでいても解き方が分かりませんよね。
問題集や模試の解説なんかも非常に分かりにくいものが多く、苦手なまま放置している人も多いのではないでしょうか。
今回は沈降線の問題の考え方を紹介します。
まず、問題を解く上で最も意識しなければならないのは、
抗原と抗体の濃度比が最適な場所に沈降線が生じる
という点です。
これの点を踏まえて以下のCaseを見ていきましょう。
<Case1>
抗原Xと抗体Xが、濃度比1:1の場所に沈降線を作る場合を考えます。抗原Xと抗体Xは同心円状に拡散していき、中心から遠くなればなるほど濃度は低下していきますから(水面にインクを落としたときのイメージ)、両者の添加時の濃度と拡散速度が同じであった場合には、下の図のように真ん中に沈降線が生じます。
ここでは分かりやすいように、黄緑の円内の濃度を4、緑内を3、水色内を2、青内を1とします。
抗原Xと抗体Xが濃度比1:1の場所に沈降線を作る場合を考えているので、沈降線は同じ色の円が交わるところに形成されるという理屈です。
文字にすると難しく聞こえますが、図を見ると直感的に分かっていただけるかと思います。
<Case2>
では、両者の添加時の濃度が異なる場合はどうなるでしょうか。抗原Xの濃度が抗体Xの2倍であり、両者の拡散速度は同じである場合を考えてみましょう。この場合ももちろん濃度比が1:1となる場所に沈降線ができますが、抗原Xの濃度が高くなると抗原Xの濃度を表す同心円が大きくなるため、円の交わる場所、すなわち濃度比が1:1になる場所が抗原Xから遠くなります。ゆえに、沈降線は抗体X側へ寄った場所に生じます。図で表すとこんな感じ。
抗原Xの同心円が大きくなる理由は大丈夫ですよね。中心の濃度が高くなるため、より遠くまで濃度の高い範囲が広がるということです。
<Case3>
それでは、両者の拡散速度が異なる場合はどうなるでしょう。抗原Xの拡散速度が抗体Xの2倍であり、両者の添加時の濃度は同じである場合を考えてみましょう。当然、この場合も濃度比が1:1となる場所に沈降線ができます。
抗原Xは2倍の速さで拡散するため、Case1よりも濃度比が1:1になる場所が抗原Xから遠くなり、Case2の図と同じような結果になると予想されますね。
今回は以上になります。
次回は添加する溶液を3つに増やしたCaseを解説します。
それではまた!
遺伝分野に出てくる用語のまとめ
「ゲノム」「遺伝子」「DNA」・・・
遺伝分野では、遺伝物質に関する似たような用語がたくさん出てきます。
最初にこれらの言葉の違いを整理しておかないと、分野全体の理解が曖昧になってしまうため、必ずおさえておきましょう。
スケールの小さいものから順に説明していきます。
・ヌクレオチドとは
塩基と糖、リン酸が結合した物質を指します。
図にするとこんな感じ。
※塩基と糖が結合した物質をヌクレオシドといいます。
・核酸とは
ヌクレオチドが多数結合してできた物質を指します。
核酸にはデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)の2種類が存在します。
図にするとこんな感じ。
・DNAとは
2種類ある核酸のうち、糖がデオキシリボースであり、塩基としてアデニン、グアニン、チミン、シトシンをもつものを指します。
なお、糖がリボースであり、塩基としてアデニン、ウラシル、チミン、シトシンをもつ核酸をRNAと呼びます。
・染色体とは
DNAがタンパク質と結合してできた複合体を指します。
ヒストンなどのタンパク質が結合しているという点で、DNAとは異なります。
核内のDNAは、何本かの染色体に分かれて存在しています。例えば、ヒトの細胞の核内には46本の染色体が存在し、1つの染色体は1本の非常に長いDNAとそれに結合したタンパク質からできています。
「細胞分裂期に現れる、DNAとタンパク質の複合体が凝集して棒状になった構造体」 (この状態→)
のみを指す場合も見られますが、この用法は古く、凝集せずとも染色体と呼ぶことが多いです。
・遺伝子とは
タンパク質やRNA分子を合成するために必要な情報をもつDNAの領域を指します。
DNAの中には、タンパク質やRNA分子をコードしないものもあり、真核生物では非常に多くのDNAがこれにあたります。
図にするとこんな感じ。
「タンパク質やRNA分子」 と書いたのは、DNAから転写されたRNAは全てが翻訳されるわけではなく、RNAそのものが最終産物となる場合もあるためです。
例えば、tRNAやrRNAなどは、それら自身が翻訳されるわけではないですよね。
・ゲノムとは
ゲノムの定義は2つ存在します。
① 生物が自らを形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報の1セット。
①の定義では、一倍体生物はゲノムを1セット、二倍体生物ではゲノムを2セット、四倍体生物ではゲノムを4セットもっていると考えます。すなわち、ヒトのような二倍体生物では、生殖細胞がもつ全遺伝情報がゲノムであると考えることができます。
「ゲノムサイズ」という用語における「ゲノム」とは①の場合を指し、「ゲノムサイズ」は一倍体ゲノムあたりの塩基対数を表します。つまり、ヒトのゲノムサイズは約30憶塩基対ですが、ヒトの体細胞1つがもつ塩基対数は約60憶ということになります。
② ある細胞や生物がもつ全ての遺伝情報。
②の定義では、①のようなややこしいことは考えず、生物やその細胞がもつ遺伝情報のすべてを指します。
「ゲノム解析」とか言う場合には、②のような意味を表すと思ってよいです。
以上になります。これだけじゃ分からないという人も多いと思うので、分からない部分はどんどん質問してください!!
最後に、記述の解答っぽくまとめておきます。印刷してノートに貼る等、自由に使ってください。
ヌクレオチド:塩基と糖、リン酸が結合した物質。
DNA:2種類ある核酸のうち、糖がデオキシリボースであり、塩基としてアデニン、グアニン、チミン、シトシンをもつもの。
染色体:DNAがタンパク質と結合してできた複合体。
遺伝子:タンパク質やRNA分子を合成するために必要な情報をもつDNAの領域。
ゲノム:「生物が自らを形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報の1セット」あるいは「ある細胞や生物がもつ全ての遺伝情報」。
ブログの趣旨
はじめまして、当ブログにお越しいただきありがとうございます!
このブログでは、高校生物に関することをいろいろ記事にしていきます。
分かりにくいところの説明、効率的な暗記方法、おすすめの参考書、過去問の解説などなど・・・。
(需要があれば生物以外の科目に関しても言及していきたいと思っております。)
高校生物は選択者が少ないこともあり、参考書や解説サイト、体験談といった情報源が非常に少ないのが現状です。
そこで、生物選択をした方の役に少しでも立てればと思い、このようなブログをはじめました。
ぜひ当ブログを活用して、生物に関する理解を深めていってもらえればな、と思います!
また、ブログをより良いものにしていくためにも、コメント、質問などは遠慮なくどんどん頂けると嬉しいです。
「この問題解いて!!」とか「この時期には何を勉強してた?」とか、何でも構いません。何なら「センター国語の勉強法教えて!」とかでも。
最後に少し自己紹介を・・・
所属:京都大学の理系学部
得意科目:生物、英語
センター選択科目:国、数、英、生物、化学、地理
分かりやすい記事を書けるよう頑張りますのでよろしくお願いします!!!